
Talk-Session vol.2「KAiGO X INVESTMENT」
投資家が介護業界に注目する理由
──成長市場を支える挑戦者たち
登壇者プロフィール

株式会社ミダスキャピタル 代表パートナー
吉村英毅 様
東京大学在学中に株式会社Valcomを創業。2007年 株式会社エアトリを共同創業し代表取締役社長に就任。2017年 株式会社ミダスキャピタルを創業。後に取締役会長に就任し、2019年 東証マザーズ上場。ミダス財団代表理事、ネクストジャパンイニシアティブ共同創設者兼代表理事、1982インパクトファンド代表理事など数多くのソーシャル活動に取り組んでいる。

株式会社ゼスト 代表取締役CEO
一色淳之介 様
東京大学大学院を修了。P&Gのマーケティング部門に入社し、日本及びシンガポールで従事。創業期の株式会社ヤマトキャピタルパートナーズ(現・東証グロースのYCP ホールディングス)に参画。マーケティング、経営戦略等のコンサルティング支援を行う。投資先エンターテインメント企業において、自らが役員として事業再生を実現。2022年に株式会社ゼストの代表取締役社長CEOに就任。
セッションの様子
介護×投資──成長市場としてのポテンシャル
司会の「お二人はどういう立場でどういう関係性なのか」という前振りと共に登場した、株式会社ミダスキャピタル 代表パートナーの吉村英毅(よしむら ひでき)氏と株式会社ゼスト 代表取締役CEOの一色淳之介(いっしき じゅんのすけ)氏。二人は、投資家と投資を受けた起業家です。
世界最速で少子高齢化が進む日本において、介護エコシステムの形成・介護の持続は重要な課題です。今回は、投資家と起業家、それぞれの立場で介護・福祉業界の課題解決に臨む吉村氏と一色氏から、介護・福祉市場の成長可能性と新たなビジネスチャンスについて語られました。
まず、ミダスキャピタルの吉村氏が、自己資本のみを運用することで、半永久的に筆頭株主であり続ける同社の投資スタイルについて説明しました。これは、短期的なリターンではなく、長期的な視点で企業成長を支えるための独自の投資戦略です。さらに、投資先企業に対して経営人材を提供し、組織を強化することもミダスキャピタルの強みの一つだと述べました。
一方で、一色氏は自身が率いるゼストのサービス「ZEST SCHEDULE」について紹介。訪問介護のスケジュール管理を最適化し、1人の介護士が対応できる訪問回数を64%向上させることに成功したといいます。この成果を受け、日本赤十字社をはじめとする大手法人でも導入が進んでいることが語られました。

投資家が介護業界に注目する理由とは?
トークの中盤では、「なぜミダスキャピタルはゼストに投資をしたのか?」という問いに対し、吉村氏が3つの理由を挙げました。
1. 介護業界の市場規模の拡大
高齢化が進む日本において、介護市場は今後も成長が続くと見込まれる
2. 訪問介護の「スケジュール調整」という大きな課題の存在
訪問介護・看護の領域のペインポイントを捉えており、解決策の需要が高い
3. ミダスキャピタルが介在することで、マネジメント・ファイナンス・テクノロジーの強化が可能
投資だけでなく、経営支援を行うことで企業成長を加速できる
ゼストに対しては、投資と同時に経営陣の組成にも関与し、CEO(現在の一色氏)をはじめ、CTOや営業責任者を集めたと語られました。単なる資金提供にとどまらず、組織の基盤強化にまで踏み込む支援スタイルは、ミダスキャピタルの投資戦略を象徴しています。
一色氏も、ミダスキャピタルの支援によって会社が大きく成長したことを実感していると語りました。売上は2年半で何十倍にも成長。ゼストは投資を受けることで、経営陣の強化だけでなく、経営サポートや知見の共有、顧客ネットワークの拡大、さまざまな面で強化されました。

介護業界の未来と新たなプレイヤーへの期待
トークセッションの終盤では、「介護・福祉業界でチャレンジしたいと考えているプレイヤー・サポーターたちへメッセージを」と振られ、両氏からは次のような話がありました。
吉村氏は「介護・福祉業界はビジネスとして大きな可能性がある」と力強く断言。DX化・EX化・大規模化・効率化によって、業界の課題を解決していくことの重要性を強調しました。
一色氏は「アナログを通じて生産性が下がっている」業界の課題を指摘し、サービスユーザーから毎日業務にまつわる数十件に及ぶペインポイント(お金をかけても解決したい悩み、課題)が届くと述べ、介護業界への展望を語りました。
「投資家の人たちに介護の業界に目を向けてもらえるというのは、そこにチャレンジしていく人が増えるのと同義」
「今まで解決されていなかった不便が解決される」
「新しい人たちが入ってきて(中略)この業界の生産性を上げられることにつながっていく」
最後に、一色氏はこれから参入するプレイヤーやサポーターを「仲間」であると表現しました。
「この業界すごくいいなと思うのは『隣の事業所は競合じゃなく仲間だ』『地域インフラを支える同志である』と皆さんおっしゃっていて、DXの会社もそう」
「業界全体を良くする、(中略)地域インフラ・日本の地域インフラ・世界の地域インフラを支える同志として、頑張っていく仲間になれたら」
今回のトークセッションでは、介護・福祉業界が抱えている課題の解決と隣り合わせにある大きなビジネスチャンスについて、繰り返し伝えられました。投資家・起業家・技術者・現場スタッフ——それぞれの立場から、この変革の波にどう関わるのか。今こそ、多くの人にとって考えるべきタイミングなのかもしれません。

他セッション
「International KAiGO Festival 」とは
高齢化を脅威ではなく成長のチャンスと捉え、介護とシルバーエコノミーを変革
——KAiGOが日本と世界の未来を動かす答えと機会を生み出す場
3人に1人が65歳以上という急速な高齢化に直面している日本。介護職不足や約9兆円の経済損失などの課題を抱える一方、シルバーエコノミーは100兆円規模に成長する見込みです。「International KAiGO Festival」は、日本が世界に誇る介護の知見をさらに進化させ、介護を中心とした経済・社会のエコシステムを共創するプラットフォームとして立ち上げられました。スタートアップ、企業、政策立案者、投資家、介護職が集い、セッションやアワードを通じて次世代のビジネスモデルや技術革新を促進。「介護エコシステム」創出につながる業界を超えた価値ある学びが得られるインキュベーションの場として、日本と企業の未来を支援します。

「KAiGO PRiDE」とは
KAiGO PRiDEは、誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の実現のため、クリエイティブの力で日本の介護を拡張・強化するプロジェクト。人類史に類をみない超高齢社会の日本では2040年に57万人の介護職が不足すると言われるなかで、私たちがライフクリエイターと呼ぶ全国の介護職・福祉職たちのSelf-respectを醸成し、社会からのリスペクトにつなげる「KAiGO-Branding」を展開。また、介護≠ケアとも言われ、私たちが世界一だと信じる日本の介護の持続可能性のため、様々なプレイヤーの巻き込みを図る「KAiGO-Ecosystem」の形成を推進しています。介護をKAiGOとして、その可能性と誇りをクリエイティブの力で形にするプラットフォームとして多様なプロジェクトをグローバルに展開しています。
