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Talk-Session vol.1『今考える これからの介護』

 

課題先進国・日本の挑戦

──在宅医療とシニアビジネスの第一人者が語る「ポジティブ・ライフ」の真価

登壇者プロフィール

佐々木 淳 氏
医療法人社団悠翔会 理事長


1998年筑波大学医学専門学群卒業。社会福祉法人三井記念病院内科/消化器内科、東京大学医学部附属病院消化器内科等を経て、2006年に最初の在宅療養支援診療所を開設。2008年 医療法人社団悠翔会に法人化、理事長就任。2021年より 内閣府・規制改革推進会議・専門委員。現在、首都圏ならびに愛知県(知多半島)、鹿児島県(与論町)、沖縄県(南風原町・石垣島)に全24拠点を展開。約8,000名の在宅患者さんへ24時間対応の在宅総合診療を行っている。

村田 裕之 氏
東北大学 特任教授/スマート・エイジング学際重点研究センター 企画開発部門長/
村田アソシエイツ株式会社 代表取締役

新潟県生まれ。1987年東北大学大学院工学研究科修了。日本総合研究所等を経て、02年3月村田アソシエイツ設立、同社代表に就任。06年2月東北大学特任教授、08年11月東北大学加齢医学研究所 特任教授、09年10月に新設された東北大学加齢医学研究所スマートエイジング国際共同研究センターの特任教授に就任。エイジング社会研究センター代表理事。わが国のシニアビジネス分野のパイオニアであり、高齢社会研究の第一人者として講演、新聞・雑誌への執筆も多数。

セッションの様子

超高齢社会を「ポジティブ・ライフ」の実装の場へ

「International KAiGO Festival 2026」の開幕を飾る最初のトークセッション。 International KAiGO Festivalが掲げる核心的なキーワードは「ポジティブ・ライフ」です。 これは、年齢や立場に関わらず、すべての人が自分らしく、楽しく生きる選択肢を社会の中に増やしていくという考え方です。

ファシリテーターを務めた一般社団法人KAiGO PRiDE理事の小口貴幸(こぐちたかゆき)は、冒頭で「超高齢社会という現実を、課題や負担としてではなく、新しい価値やビジネス、そして創造が生まれる可能性として捉えたい」と宣言。 在宅医療とシニアビジネスの専門家である両氏を迎え、これからの介護が医療、生活、ビジネスと複雑に絡み合いながら、どのように未来のデザインを変えていくのかについて熱い議論が交わされました。

「リアル健康寿命」が明かす、シニア世代の真の姿

まず登壇した医療法人社団悠翔会理事長の佐々木淳(ささき じゅん)氏は、統計データをもとに、私たちが抱く「高齢者」のイメージと現実のギャップを鮮やかに描き出しました。 佐々木氏は、現在の日本人が亡くなるピークは男性で約90歳、女性では90歳を超えている事実を指摘。 その上で、単なる「健康寿命」ではなく、自立して生活できる期間を示す「リアル健康寿命」の重要性を強調しました。

「88歳の男性でも要介護認定率は50%に満たない。日本人は思っている以上に長生きし、かつ元気です」と佐々木氏。 かつての「50代・60代」のイメージは今や一世代分後ろにずれ、現在の高齢者は身体的にも非常に若返っています。 佐々木氏は、要介護状態になってからの平均生存期間は5年程度であり、「10年も寝たきり」というケースは全体から見れば少数であると説明しました。 このデータは、「人生の終盤まで、いかに社会参加を続け、自分らしく生きるか」という問いが、これまで以上に現実的なテーマであることを物語っています。

シニアビジネスの本質は「社会課題の解決」にあり

続いて、シニアビジネスのパイオニアである村田アソシエイツ株式会社の村田裕之(むらたひろゆき)氏が、ビジネスの観点から「高齢化の進化」について語りました。 村田氏は、自身が提唱してきた「シニアビジネス」について、「人口減少社会において、収益事業の力を使って社会問題を解決すること」であると定義しています。

村田氏は「カーブス」の例を挙げました。 90度近く腰が曲がっていた83歳の女性が、筋トレを通じて腰が伸び、食事ができるようになり、人生の活力を取り戻したエピソードを紹介。 「ビジネスには、苦痛を伴うサービスを『楽しい、嬉しい』というメカニズムに変える力が必要」と述べ、フィジカルな改善がメンタルやソーシャルな健康へと波及していく「環境作り」こそが、シルバーエコノミーにおけるビジネスの真髄であると説きました。

また、AI時代においても「職業体験に基づく体験的な知恵」は人間にしか出せない価値であり、ダイキン工業株式会社のように高齢社員の知見をマネジメントに活かす企業姿勢こそが、今後の大きな機会を生むと指摘しました。

制度の枠を超え、介護を「自分らしい暮らし」の道具にする

セッションの後半では、現在の介護保険制度の枠組みを超えた、未来の介護のあり方について議論が深まりました。 村田氏は「『介護保険内外』という見方自体が、介護業界ありきの発想。一度制度の枠を外して事業を見直すことで、未解決の課題が見えてくる」と提言。

佐々木氏もこの意見に賛同し、医療や介護を「人生を豊かにするための道具」として再定義する必要性を訴えました。 「お金があるのに自分らしい選択ができていない高齢者が多い」という現状に対し、佐々木氏は、制度による画一的なケアではなく、創意工夫と民間サービスの活用によって、限られた財源の中でも生活を豊かにできる可能性があると述べました。

さらに、重度の認知症であっても特定の技能(手続き記憶)を活かして仕事を続ける高齢者の事例を紹介し、「本人の強みややりたいことをキャッチし、それが実現できる環境を整えることが重要。環境さえ整えば、どんな状態になっても社会に貢献できる」と語りました。

課題先進国・日本が世界に示す「未来のモデル」

両氏は日本が直面する現状を「世界への先行利益」とポジティブに捉え、セッションを締めくくります。

佐々木氏は、「日本は高齢化で先行しているが、これから韓国、台湾、シンガポールなどがより速いスピードで追随してくる。日本でのチャレンジは先行利益となり、後続の国々にとっても大きな利益になる」と、日本の取り組みが世界的な価値を持つことを強調しました。

村田氏もまた、「世界中が日本の対処策を必死に学ぼうとしている。もがき苦しみながら生み出している知恵が、必ず他国の役に立ち、ありがたがられる時期が来る」と語り、自身の夢を「日本人、日本はすごいなと言わせたい」と力強く伝えました。

本セッションを通じて浮き彫りになったのは、介護を単なる「衰えへの対応」とする旧来の観点を脱ぎ捨て、個人の「ポジティブ・ライフ」を最大化させるための、巨大な市場と創造性の広がりです。これこそが、KAiGO PRiDEがInternational KAiGO Festivalを通じて提唱する「高齢化を脅威ではなく、日本と世界の未来を動かす成長のチャンスへと変える」という強い意思であり、メッセージです。

日本が誇る介護の知見と、テクノロジー、そして何よりも一人ひとりの「どう幸せに生きたいか」という想いを掛け合わせることで、私たちは新たな「KAiGOエコシステム」を共創していきます。介護の価値を再定義し、シルバーエコノミーがもたらす未開拓の可能性を確信へと変えていく──。日本から世界の未来を動かす新たな物語が、今International KAiGO Festivalから始まろうとしています。

セッション一覧

「International KAiGO Festival 」とは

高齢化を脅威ではなく成長のチャンスと捉え、介護とシルバーエコノミーを変革
——KAiGOが日本と世界の未来を動かす答えと機会を生み出す場

3人に1人が65歳以上という急速な高齢化に直面している日本。介護職不足や約9兆円の経済損失などの課題を抱える一方、シルバーエコノミーは100兆円規模に成長する見込みです。「International KAiGO Festival」は、日本が世界に誇る介護の知見をさらに進化させ、介護を中心とした経済・社会のエコシステムを共創するプラットフォームとして立ち上げられました。スタートアップ、企業、政策立案者、投資家、介護職が集い、セッションやアワードを通じて次世代のビジネスモデルや技術革新を促進。「介護エコシステム」創出につながる業界を超えた価値ある学びが得られるインキュベーションの場として、日本と企業の未来を支援します。

「KAiGO PRiDE」とは

KAiGO PRiDEは、誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の実現のため、クリエイティブの力で日本の介護を拡張・強化するプロジェクト。人類史に類をみない超高齢社会の日本では2040年に57万人の介護職が不足すると言われるなかで、私たちがライフクリエイターと呼ぶ全国の介護職・福祉職たちのSelf-respectを醸成し、社会からのリスペクトにつなげる「KAiGO-Branding」を展開。また、介護≠ケアとも言われ、私たちが世界一だと信じる日本の介護の持続可能性のため、様々なプレイヤーの巻き込みを図る「KAiGO-Ecosystem」の形成を推進しています。介護をKAiGOとして、その可能性と誇りをクリエイティブの力で形にするプラットフォームとして多様なプロジェクトをグローバルに展開しています。

International KAiGO Festival 2026開催報告

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