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International KAiGO Festivalスポンサーセッション

「小売から“ケア・エコシステム”へ~イオンが挑むシニアケア・マーケットプレイス構想~」

 

小売から“ケア・エコシステム”へ

── イオンが挑むシニアケア・マーケットプレイス構想

登壇者プロフィール

田添 里佳 氏
株式会社トンボ ヘルスケア本部 東京販売課

北林 裕美 氏
株式会社プランツ 代表取締役

伊藤 ヒロキ 氏
株式会社フジテックス

藤吉 千絵 氏
イオンリテール株式会社 MySCUE事業部 リーダー

セッションの様子

なぜ、小売り大手のイオンが介護に参入したのか

「International KAiGO Festival 2026」の2日目、流通大手のイオンリテール株式会社による注目のスポンサーセッションが開催されました。 テーマは「小売から“ケア・エコシステム”へ」。 モデレーターを務める アナウンサー/一般社団法人 エムむすび 理事の櫻田 彩子(さくらだあやこ)氏 は、2025年に団塊の世代が全て後期高齢者となった日本の現状を挙げ、介護ケア市場の需要に対し、供給が限界に達しつつあると指摘。「社会課題の解決のために、役立つものをいかに提供できるか、良いインパクトの経済をどう循環させるかが企業の使命である」と本セッションの意義を提示しました。

これを受け、イオンリテール株式会社 MySCUE事業部 リーダーの藤吉 千絵(ふじよしちえ) 氏 は、同社がシニアケア事業「MySCUE(マイスキュー)」に注力する最大の理由を語りました。 「イオンは日常のお買い物という行動から、すでにお客様の暮らしに根ざしています。『売るため』ではなく、介護の備えを自分事化してもらうために『支えるため』に始めた事業です」と、藤吉氏は断言します。 MySCUEは、介護者(ケアラー)をメインターゲットとし、「情報サイト・アプリ」「リアル店舗」「マーケットプレイス(EC)」の3本柱で構成されています。 生活者の日常に最も近い小売りという場を活用し、介護を特別なことではなく、暮らしの延長線上にあるものへと変えていく。 その決意は、自身の介護経験から同事業に公募異動した藤吉氏の熱い言葉からも伝わってきました。

良いものを「埋もれさせない」マーケットプレイスの使命

2026年4月にグランドオープンする「MySCUEシニアケアモール」は、単なる自社物販ではなく、出店型マーケットプレイスの形態をとっています。 その背景には、介護市場特有の構造的課題がありました。 藤吉氏は、「介護の世界には、ニッチだけれども本当に良い商品がたくさんあります。しかし、メーカーが単独で流通させるには物量や物流の壁が厚い」と指摘しました。 この課題に対し、イオンは自社のネットワークと顧客基盤を開放。 出店パートナーと共に市場を広げる「モール型」を採用することで、「必要な人に、必要な価値が届かない」という需給のミスマッチを解消することを目指しています。

本セッションには、実際にこのマーケットプレイスに参画する3社のリーダーも登壇しました。 学生服で知られる株式会社トンボ ヘルスケア本部の田添 里佳(たぞえりか)氏 は、約30年にわたり施設向けに展開してきた自社ブランド『KIRAKU』の課題を語りました。 「施設や病院で着ていた服を、自宅に帰っても着続けたいという要望は多いのですが、一般の方がどこで買えばいいかわからない状況でした」 田添氏は、イオンという身近な存在を通じて、「特別な介護服」ではなく「日常のファッション」としてケア用品を届けることの重要性を強調しました。

株式会社プランツ 代表取締役の北林 裕美(きたばやしひろみ)氏 も、MySCUEとの出会いが大きな転機になったと語ります。北林氏が手がけるのは、無添加青汁『ベジプレッソ』。「野菜をエスプレッソのように濃縮して手軽に摂ってほしい」という思いから名付けられたこの製品は、デキストリンなどの添加物を一切使用しない100%自然由来であることに加え、飽きずに毎日のお茶のように楽しめるよう50種類以上のレシピを展開しているのが特長です。

北林氏は、以前から103歳のお客様より「体調や便通が良くなった」という喜びの声を直接受け取る中で、自社の製品が介護領域に貢献できる確信を持ち、その接点を探していました。同氏は、「百貨店などの一般流通ではなかなか出会えなかったケアの当事者やご家族に、店舗という日常の垣根のない場所で直接手に取ってもらえる。 このMySCUEのプラットフォームには、健康維持と介護を繋ぐ大きな可能性を感じています」と強い期待を寄せました。

BtoBの壁を壊し、消費者の「選択の自由」を取り戻す

商社の立場から参画する 株式会社フジテックスの伊藤 ヒロキ(いとうひろき)氏 は、シニア市場のボトルネックを「情報へのアクセス」だと分析します。 「我々のような商社は基本的にBtoBですが、ケアの世界は最後の1マイル、つまり実際のケアラーにどう届けるかが課題でした。自分自身、遠方の両親の見守りセンサーを買いたいと思っても、手段がなかったのです」 伊藤氏は、MySCUEが「最後の1マイルを繋ぐインフラ」として機能することで、メーカーがより良いものづくりに専念でき、マーケット自体が拡大していく展望を語りました。

また、流通の変化は現場の慣習も変えようとしています。 これまではケアマネジャーから提案される特定の業者のものを使うことが当たり前でした。 藤吉氏は、自身の経験から「消費者側から『この車椅子がいい』と提案できる流れを作りたい」と述べ、「与えられるケア」から「自ら選ぶケア」へのパラダイムシフトを提言。 マーケットプレイスが多様な選択肢を提示することで、消費者が自分らしく生きるための意思決定をサポートしていきます。

出店者同士の「共創」が新たなカテゴリーを生む

セッション後半では、モール型だからこそ生まれる「出店者同士の交流」についての議論が深まりました。 藤吉氏によると、すでにMySCUEのイベントを通じて、メーカー同士が協力して新商品を開発するような動きが生まれているといいます。 伊藤氏も「共通の課題感や思いを持つパートナー同士が交流することで、新しい切り口の商品が生まれるのが楽しみだ」と、「ケア・エコシステム」としての発展に意欲を示しました。

「介護だから我慢する」「介護だからおしゃれを諦める」といったネガティブな認識を、デザインとクリエイティブ、そして流通の力で壊していく。 藤吉氏は、MySCUEのロゴやサイトデザインがあえて「介護らしくない」ことを強調し、誰もがワクワクしながらケアに触れられる世界観作りを徹底していると語りました。 将来、スマホネイティブな世代がシニア層になったとき、マーケットプレイスはさらに当たり前の存在として、人々のポジティブ・ライフを支える強固な基盤となっていくでしょう。

本セッションを通じて鮮明になったのは、100兆円規模とされるシルバーエコノミーの可能性を確信へと変えるための、イオンとパートナー企業の挑戦です。単なる「負担の解消」から、新たなライフスタイルを創出する「ケア・エコシステム」へと昇華させる試み。これこそが、KAiGO PRiDEが「International KAiGO Festival 2026」を通じて提唱する「高齢化を脅威ではなく、日本と世界の未来を動かす成長のチャンスへと変える」というビジョンの具体的な社会実装の一環に他なりません。

巨大な流通網を持つイオンが、専門職の知見やメーカーの情熱を吸い上げ、一人ひとりの「自分らしくありたい」という願いに直接届けていく。この新しい「ケアのインフラ」が広がっていく時、高齢化社会は人類にとって豊かで創造的なステージへと進化するはずです。誰もが誇りを持って生きるポジティブ・ライフな未来。その大きなうねりは、マーケットプレイスという共創の場から、着実に社会を塗り替え始めています。

セッション一覧

「International KAiGO Festival 」とは

高齢化を脅威ではなく成長のチャンスと捉え、介護とシルバーエコノミーを変革
——KAiGOが日本と世界の未来を動かす答えと機会を生み出す場

3人に1人が65歳以上という急速な高齢化に直面している日本。介護職不足や約9兆円の経済損失などの課題を抱える一方、シルバーエコノミーは100兆円規模に成長する見込みです。「International KAiGO Festival」は、日本が世界に誇る介護の知見をさらに進化させ、介護を中心とした経済・社会のエコシステムを共創するプラットフォームとして立ち上げられました。スタートアップ、企業、政策立案者、投資家、介護職が集い、セッションやアワードを通じて次世代のビジネスモデルや技術革新を促進。「介護エコシステム」創出につながる業界を超えた価値ある学びが得られるインキュベーションの場として、日本と企業の未来を支援します。

「KAiGO PRiDE」とは

KAiGO PRiDEは、誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の実現のため、クリエイティブの力で日本の介護を拡張・強化するプロジェクト。人類史に類をみない超高齢社会の日本では2040年に57万人の介護職が不足すると言われるなかで、私たちがライフクリエイターと呼ぶ全国の介護職・福祉職たちのSelf-respectを醸成し、社会からのリスペクトにつなげる「KAiGO-Branding」を展開。また、介護≠ケアとも言われ、私たちが世界一だと信じる日本の介護の持続可能性のため、様々なプレイヤーの巻き込みを図る「KAiGO-Ecosystem」の形成を推進しています。介護をKAiGOとして、その可能性と誇りをクリエイティブの力で形にするプラットフォームとして多様なプロジェクトをグローバルに展開しています。

International KAiGO Festival 2026開催報告

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